2011年7月30日土曜日

金(カネ/gold)に価値はあるのか?

端的に言うと,もちろんある。
でもそんな単純な話じゃない。

今朝の「日経PLUS1」(土曜付録)の,
小さい子向けニュース解説が「ゴールドの価格上昇」についてだった。
そこから着想を得た。

今日のお話に出てくる【金】は「カネ」「gold」と分記します。




goldってなんで価値があるの?
それはね…年間の産出量が少なく一定で,さびず,ずっと綺麗だから。

そして昔は「兌換紙幣」といって,カネはgoldや銀との引換券としての役割があった。
つまり,カネの本質的な価値は,goldや銀にあるのだ,と。

1.カネ=gold
2.gold=価値がある

つまり,
カネ=価値がある

という論理が成り立つわけですね(文系的正しい数学の使い方)。


でもね,今,どこの国もgoldとの一定率での交換を約束していないでしょう?

この時点で,
さっきの
1.カネ=goldが成り立たなくなるわけです。

ちなみに,
2.gold=価値がある
こちらも大変不思議。
「年間の産出量が少なく一定で,さびず,ずっと綺麗」だとなぜ価値があるのか?
真珠やダイヤの年間産出量は知らないけど,それらでもよくない?
goldなんて食えないし。使えないし。

そもそも大昔,貝殻をカネ代わりに使っていたわけだし。

でもカネにgoldも,価値あるじゃん(・ε・)



カネには
・価値の貯蔵
・価値の尺度
・交換の媒体
これらの機能がある。
要するに,これらが満たされていればgoldだろうが銀だろうが,紙切れだろうが貝殻だろうが,なんでも良いのです。

つまり,
「何か上の役割を果たせる物がないと困るよね。
便宜上,goldやカネを上記の役割を果たすための道具としよう」

そうして,
「goldやカネを持って行けば,みんなが自分の欲しい物と交換してくれる」
から,価値が発生するのです。

決してgoldやカネ自体に価値があるわけではございません。




【追補資料】
例えば,
goldが100gと,米が100gしか存在しない世の中を考えてみる。
単純に考えれば交換比率は
gold:米=1:1
つまり,goldを1g持って行けば,米1gと交換してもらえる。

そこで王様は考えました。
「goldを新しくいっぱい採掘すれば,俺の財産減らすことなく,米がいっぱいもらえるんじゃね?」

金(gold/カネ)が交換のための道具でそれ自体が価値を持たないのなら,
goldをいっぱい採掘したら,gold1gと交換できる物の量は少なくなってしまう。
それを理解しない王様は,新たにgoldを100g採掘させた。

するとどうなるか

goldが200gと米100gで釣り合わせるには
gold:米=2:1
つまり,goldを2g持って行かないと米1gもらえなくなった。

要するに,「ハイパーインフレ」ですね。物価が2倍に跳ね上がったわけですから。

……昔,スペインの王家がこれに近いことをやらかしたから困る(当時は銀だったが)。
(ファーガソン 2009, pp.39-40)

「施政者が頭悪いと,苦労するの国民だよね(´・ω・`)」って先生と話しておりましたw


【参考資料】
ニーアル・ファーガソン(2009)『マネーの進化史』,早川書房

2011年7月27日水曜日

米国債と,デフォルトと,円高

1ドル=77円63銭(記事うp時/bloomberg)という記録的な円高水準になっている。

数年前には100円,120円という水準であったから,恐ろしい水準だ。


日本は経常収支黒字,アメリカは経常収支赤字だから当然,基調的な要素もあるだろう。
しかし急激な円高はそれだけでは説明がつかない。

最近の原因はずばり

“米国債デフォルトの懸念”
だ。

どういうことなのか。



アメリカは法律で「借金は14兆2900億ドルまでですよ」と上限が定められている。
その借金の総額が上限に達するのが今年の8月2日なのだ。

上限を超えると,借金が出来なくなる。すると何が困るか。
政府は要するに自転車操業状態だから,新しく借金が出来ないということは,
昔借金したお金(利子も)を返せなくなるということを意味している。

借金を返済できないことをデフォルト(=default/債務不履行)という。






アメリカ国債は世界中の銀行・保険会社・証券会社・その他機関投資家,あるいは政府や中央銀行が“世界一安全な資産”として保有しているから,
もしも「返せませんわ~」なんてなったら,リーマンショックを強化した感じで大混乱が起きかねない。

 またアメリカにとっても,自国の信用に傷が付いては今後も末永くお金を貸してくれない自体になりかねない。



「だったら借金の上限を取っ払っちゃえば良いんじゃない?ただのルールなんだし」

仰る通り。しかし小さな政府を志向する共和党 がそれを渋り,現在,民主党や政府と話し合っているのだ。

「いや,でもね,さすがにデフォルトはまずいから,最後には妥協して借金の上限を引き上げるだろう」

と世界中のみんなが思っていた。思っていたのだが…どうやら雲行きが怪しくなってきた。
どう見ても死亡フラグです本当に(ry
(ちなみにテスト期間にこんなこと書いてる私も死亡フラグびんびん)



みんな「おいおい大丈夫なのか?」と不安になり ,ドルを売り,安心安全な円を買い始めた。
まぁ,日本はデフレ(物価が下がり,お金の価値が上がる)だから,「円」持ってるだけで得だしね。




ところで,アメリカ財務省は国債の信頼性を維持するために,
「もし債務上限に到達しても,利子や元本のお支払いのため,入ってきた税金を優先してそっちに回します」

と言っているのだが……
「こんなことやってるようではねぇ……」
米国債・米政府に対する信頼が揺らぐことは確実だ。